近年、グローバルな取引において政治・経済の影響は無視できない要素となっています。特に、米国との取引では、トランプ政権時代に導入された関税政策(いわゆる「トランプ関税」)が、現在もなお一部で影響を及ぼしており、日本企業にとっては戦略的な対応が求められます。
トランプ関税とは?
トランプ政権下で導入された追加関税政策は、中国をはじめとする多くの国からの輸入品に高率の関税を課すものでした。この影響は米中貿易摩擦の文脈で語られることが多いものの、その他の国にも波及し、日本からの製品輸出にも影響が出るケースがあります。
特に理化学機器や教育関連設備を扱う日本企業にとって、アメリカの大学・研究機関への輸出は重要な市場です。しかし、該当する機器が関税対象となった場合、その分価格が上昇し、取引先にとってはコストが増すことになります。結果として、価格競争力が落ち、売上が左右されるリスクが生じます。
売上への影響
- 価格転嫁が困難な場合:関税分を上乗せすると競合に負ける可能性があり、価格据え置きを選べば利益率が下がります。
- 取引先の予算制限:大学などの公共機関は予算が限られており、関税負担がネックになることがあります。
- 納期やロジスティクスの遅延:関税審査が追加で必要になると、納期遅延などのリスクも増え、信頼性に影響します。
消費税還付の仕組み:輸出取引は非課税
一方で、輸出取引にはメリットもあります。その一つが消費税の還付です。日本の消費税法上、「輸出取引」は非課税扱いとなり、仕入れにかかった消費税を還付申告することが可能です。
還付の流れ:
- 輸出取引としての証明:インボイス、B/L(船荷証券)、契約書等を保存。
- 申告手続き:原則として毎月・四半期・年次で税務署に還付申告。
- 還付金の受け取り:審査のうえ、銀行口座に入金。
これにより、輸出ビジネスでは税負担を軽減しつつ、価格競争力を維持することが可能になります。とくに海外大学との定期的な取引がある場合、還付申告をきちんと行うことで資金繰りの安定にもつながります。
おわりに
米国との取引では、関税政策の変動に常に注意を払い、価格設定や契約内容を見直す必要があります。同時に、輸出取引の消費税還付という制度をうまく活用することで、利益率を確保しやすくなります。
今後も国際情勢は不確実性が高く、企業の柔軟な対応力が問われます。海外の大学・教育機関との取引に関わる皆さまには、関税と税務の両面からの戦略設計をおすすめします。